お気に入りのガイドブックに日経ナショナルジオグラフィック社から出版されているThe National Geographic Travelerシリーズの『ギリシャ』があります。しかし、実はこのガイドブックにも残念ながらとんでもない記述が……。
このガイドブックのP42、P43の見開きに掲載されている写真とそのキャプション。写真は「とある」博物館内でのオリンピックの聖火の採火式の様子です。キャプションを読むと「オリンピアから運ばれた火は、アテネの国立考古学博物館でオリンピックの聖火にともされる」。「あれ?」と思って写真の背景をよく見てみると、パイオニアスの手によるニケ像。この彫刻はオリンピア考古学博物館にあるものです。つまり、写真の舞台はキャプションが指し示すようにアテネの国立考古学博物館ではないのです。
さらに。オリンピック聖火は、通例、オリンピアのヘラ神殿で、太陽光を鏡で集めて採火されます。ギリシャ文化省のサイトには、まさにそのヘラ神殿での採火の様子が掲載されています。太陽光から採火するということは、雨はおろか曇りであっても火を採ることはできないでしょう。そういえば、天候が悪かったため太陽光からの採火ができず屋内で採火式が行われたというニュースを90年代に耳にしたことがあります。このナショナルジオグラフィック社のガイドブックに掲載されているのは、まさにその時の写真ではなかろうか? そう思っています。つまりここに掲載されている写真とキャプションは、オリンピックの採火を一般的に語ったものとはいえないのです。

オリンピア・ヘラ神殿
採火はここで行われる
おそろしいものです。このナショナルジオグラフィックはそもそもアメリカのNational Geographic Societyが出版しているガイドブックを翻訳したもの。そして、それが翻訳され、とんでもない情報が世界に広がっていくのです。「翻訳」って書いてあることをそのまま別の言葉にすることなのでしょうか? でも、内容まで検証して、誤りがあったらオリジナルにフィードバックしていくなんて理想でしかないのでしょう。
というのも先に引き合いにだしたキャプション、「オリンピアから運ばれた火は、アテネの国立考古学博物館でオリンピックの聖火にともされる。」これって日本語になってないですよね。「オリンピックの聖火にともされる」っていったいどんな様子なんでしょう。こういったわけのわからない日本語を世に出してしまう。そんなレベルの翻訳者、校閲者、そして編集者が関わっているガイドブックですから。
ナショナルジオグラフィック社日本版のサイトにリンクをと思ってサイトをのぞいたところ、「本ホームページが公開する情報の信頼性が害されるおそれが存するなどの事情があるとナショナル ジオグラフィック協会および日経ナショナル ジオグラフィック社が判断した場合は、リンクをお断りすることがあります。また、いったんリンクを許諾した場合であっても、リンク許諾後に判明した事情または変化した事情により、日経ナショナル ジオグラフィック社がリンクの許諾が妥当ではないと判断した場合、リンクの許諾を取り消す場合がございます。その点、ご了承ください。」とあった。この記事は「確実に」断られるであろうという勝手な推測のもとリンクは諦めました。