オリンピア考古学博物館で展示品を見ていたときの不思議な体験。

オリンピアの博物館の珠玉のひとつが、プラクシテレスの手によるデュオニッソスをあやすヘルメス像。この像は博物館入って奥の右側の部屋に展示されていて、しかもそのほかの展示品がないため、その部屋はこの像専用の部屋といっても過言ではない。その博物館がもっとも大切にする展示品に専用の部屋が割り当てられているというのはよくあることだ。
この部屋で一人になったとき、「ラッキー!」と思った。ゆっくりと像を眺めることができるから。しかし、 なぜか、背中に感じる厳しい視線。振り返ると博物館員がわたしの行動をじっと監視している。気のせいかと思いきや、その博物館員はずっとわたしをつけてくる……。こんな経験はギリシャでは初めてだったが、その時はその嫌な感じはそれほど後を引かなかった。

しかし、ピレウス考古学博物館にいったとき。一気にオリンピアでの嫌な感じが呼び起こされた。この考古学博物館はさほど訪れる人もいなかったせいか、博物館員は入り口付近で集まっておしゃべりに夢中。ところが、わたしたちが博物館に入るや、4名ぐらいいた博物館員が全員わたしたちの後をつけてきて、じっとわたしたちの行動を監視しているのだ。
そこで、「もしかしたら」というニュースを思い出した。今年5月にオリンピアから7キロもの遺跡の石を持ち帰ろうとした日本人が逮捕されたというニュース。まあ、推測ではあるが、この事件が、日本人観光客に対するギリシャ人の見方を一気に変えてしまった、つまり、日本人=窃盗予備軍のような偏見を埋め込ませてしまったのではないかということなのだ。。そもそも博物館員は、展示品を守るためにそこにいるのだから、、看視は当たり前。とはいっても今回はちょっとあからさまじゃないのと感じた上、むしろこれまでそのような経験はなかったので、やはりこんな推測をせざるを得ない。
さて、この恥知らずな日本人。300ユーロの保証金を支払って釈放され帰国したそうだ。本人は「おみやげで持ち帰ろうとした。反省している」との弁だそうだが、本当に反省しているのなら、もう一度ギリシャに行って、ギリシャ国民の前で謝ってほしい、ギリシャの遺跡、美術品保存のため、寄付をするといった活動をしてほしいと真剣に思っている。この人の名前は報道されなかったが、まあ、調べることは可能なんだろうな、などとちょっとブラックなことも考えたりする。そのぐらい許せない行為なのだ。それはわたしの今回の嫌な経験を抜きにしても。
ところで、この人、50歳代だそうだが、わたしの中でこの世代はちょっと曲者世代という認識がある。全共闘世代よりは後の世代で、ふぬけにされた世代。しかも、戦後の日本のいいところばかりを経験している世代で、この世代がもっとしっかりしていれば今のような日本にはならなかったのではと漠然と思っている。無論みんながみんなそうではないことは分かるけど。 br>あっ、これって「日本人=窃盗予備軍」という偏見を持つのと同じことか……。
とにもかくにも、この日本人の行為は許せない。もう同じことが起こらないことを祈るほかない。しかし、大英博物館というとんでもない博物館を作ったイギリス人を「泥棒」って呼びにくくなってしまったではないか。考古学史上、イギリス人が犯した犯罪の数々を広く知ってもらおうと思っていたのに。