手持ち無沙汰だったので、ちょっと英和辞典をめくってみた。こういうときに最初に調べるのは、だいたい、“Greek”というワードだったりする。英語で、“Greek”というと、「ギリシャの」という意味の形容詞や「ギリシャ人」という意味の名詞に加え、“It's Greek to me「チンプンカンプン」”、というが使い方がかなり有名だ。こういった用法はallegoryと呼ばれるらしいが、ちょっとめくってみた『ランダムハウス英和辞典』には、こんな用法も掲載されていた。
She will do it on the Greek. 「いつまでたっても彼女はそれをしないね.」
『ランダムハウス英和辞典』“Greek”より
これは、古代ギリシャ暦についたち(朔日)がなかったということが理由らしく(本当か?)、決してギリシャ人が時間にルースだからと一般的に考えられているからではないらしい。 とはいえ、ついたちがないということ自体が、時間にルースという思い込みを起源にしたAllegoryかもしれない。さらに、古い用法では「詐欺師」「ペテン師」、さらに男性同性愛者をさす意味(米語・俗語)までよくもまあ、こんな使い方をするなと思うほど、あれこれ並んでいる。イディオムには、こんなものもある。
Beware of Greeks bearing gift 「油断ならない贈り物をするギリシア人に注意しろ」
Greek meets Greek 「両雄相会う」
『ランダムハウス英和辞典』“Greek”より
2年ぐらい前に、とある英語教育番組で講師をしていた、とある人とallegoryの話をしたとき、その人から、allegoryにはネガティブな意味を持つものばかりと聞いた。そこで、いくつかのナショナリティ(もしくはことば)を表す単語を引いてみた。“French”には、性的な俗語が並ぶ。ところが“German”にはこれといったallegoryはない。ラテン語系はヤバイのか?と“Spanish”、“Italian”を調べたら“German”と同様、これといったallegoryはない。社会人になって間もない頃、とある海外の会社に対して「費用は按分しよう」という提案をするレターを書かなければいけなくなって、“Go Dutch”とか書いたら上司に止められたことを思い出して(ビジネスレターにあまりにふさわしくない表現であると同時に、相手がオランダの会社だったから。結局“Let's split the bill.”としたような気がする。)、“Dutch”を調べたら、「間に合わせの」「けちな」「質の悪い」「酒の上の」といった意味がある。まあ、ざっと見たところ、ギリシャ人に加え、フランス人、オランダ人は、英米人になにか悪く言われているようだ。というか、もしかしてねたまれているとか、逆恨みされているとかいうことかもしれない。フランスには英仏戦争(個人的には仏英戦争と呼びたい)の恨みが、オランダには英蘭戦争(蘭英戦争)の恨みが、そして、ギリシャにはヨーロッパ文化の起源と言われていることに対するねたみということだ。
とはいっても、こんなふうに解釈するのも、allegoryの土壌になる、ある種の思い込みだったり、偏見だったりするのだろう。ナチス・ドイツはどうなのよ? と言われればそれまでだし。とはいうものの、ネガティブな意味で“Greek”を使う人にあって、カチンときたときは、もっともらしくこの詭弁を使ってみるのも手かもしれない。ちなみに、“It's Greek to me「チンプンカンプン」”の起源は、シェークスピアの『ジュリアス・シーザー』での用法が起源らしい。こういった発見があるので、これといった、目的がなくても辞書をめくるのはおもしろかったりする。希希辞典でこういったのを調べてみるのも一興だが、そこまで希希辞典は読みこなせなかったりする。そのうちに……。
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